zwid’s blog

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舞台「新・罪と罰」【傳谷英里香】

元ベビレのでんちゃんが出演する舞台「新・罪と罰」を見にいった。

僕が見に行ったのはおととい(4/27)の昼公演だった。その日のうちに感想を書こうと思ったけどネタバレになりそうだったので今日の16時開演の千秋楽まで待って書くことにした。

ドフトエフスキーの「罪と罰」を下敷きにした作品で内容は重たかった。表題にあるような「罪と罰」そして「善と悪」について考えさせられる作品だったと思う。

公式サイトのあらすじ

2019年東京。オリンピックを来年に控え、各地で街が生まれ変わろうとしている年。寒波が街を包み、異常な寒さを記録する。

売れない作家、松田隆は、ある時期から一つの考えに取り憑かれる。
『選ばれた人間』は、悪行を犯したとしても、『人類の幸福に貢献』するための行為であれば罪に悩まされることはない、という考えだった。

松田はその考えを実行しようとする。日本有数の資産家である埜代宗久を襲い、奪った資金で、貧しく虐げられた人々を救おうという計画だったが失敗し、逆に松田は埜代からある提案をされる。

それは、狂気の提案だった…

罪と罰』から150年、
現代の日本を舞台に新たな切り口で物語が蘇る。

 

ここからはネタバレありのあらすじ 

公式サイトのあらすじには売れない小説家とだけある松田だが、実はデビュー作はヒットしている。そこで得られた利益で「貧しく虐げられた人々を救おう」という目的で「学びの家」という社会人のための学校を設立している。資産家である埜代(やしろ)からの提案というのは「ミシマ」という老人を殺害することで資金難の「学びの家」に多額の寄付を行うというものだった。ミシマは過去に飲酒運転で事故をおこし、その事故で当時妊娠していた埜代の娘が亡くなっている。

松田は葛藤しながらもミシマ殺害を実行する。しかしその殺害現場にあった写真をみてミシマが松田の友人である門倉雄介、夕夏きょうだいの父親であることがわかる。ミシマというのが偽名であったため殺害するまで気が付かなかったのである。

「学びの家」は寄付金で経営難を逃れ、生徒も増え、恵まれない人達が教育を受けられるようになった。しかし警察と探偵の捜査で追い詰められた松田は夕夏にだけ自分がミシマを殺したということを告白する。そんな中、埜代がミシマ殺害を認める遺書を残し自殺したため捜査は打ち切られる。逮捕される可能性がなくなり安堵する松田だったが、門倉きょうだいなどの説得によって自首する道をえらぶ。

感想

赤い扉

舞台中央の奥にある赤い扉が照明のおかげか真っ暗な中に浮いているようにみえてとても印象的だった。松田がミシマを殺害したあと逃げるときに出て行った扉でもあり、ラストシーンで松田が自首を決意してその中に入っていった扉でもある。僕にはあの扉が罪を犯すことと犯さないことの境界線のように見えた。そしてその扉はきっかけさえあれば簡単に開いてしまうかもしれないとも。特に「学びの家」の教師でもある神父の島津を見ていてそう思った。

島津はボランティアで教師をしていたが資金難の学びの家を助けようとして怪しい儲け話にのった結果借金を抱えてしまう。さらに寄付金が入ったときに過去に資金を使い込んでいたことが判明して「学びの家」の教師を解任される。借金で家庭もバラバラになった島津は「学びの家」の教え子の風俗嬢に入れ込むが、その子に「落ち込んでいたからカモにしただけ」と言われ逆上し殴ってしまう。彼は悪人だろうか?いくつかの失敗で転がり落ちるように罪を犯してしまった少し環境が違えば罪を犯さずに済んだと思うのである。「学びの家」で学んだり役割を与えられて人生が好転していく生徒たちと対照的に描かれていたと思うし環境が善悪に与える影響を考えさせられるキャラクターだったと思う。

罪に対する罰などない

松田を説得する探偵の言葉に「暗闇の自由より身を焼く炎の方があなたの未来のためになる」というようなことをいうシーンがあった。自首をすることを決めた松田は暴行事件を起こしたあと逃げている島津と偶然出会い「罪に対する罰などない」という考えを語る。犯した罪は取り返しがつかない。それに対する罰というものは何か一つの塊のようなものでなく、ずっと人生についてくる影のようなものでそれを一生背負っていくものだと僕は解釈した。

今日、明日、あるいは1時間1分といった時間の集合が人生でそれをどう生きていくのか考えさせられる舞台だったと思う。

でんちゃんの役

松田の友人というか恋人になる役で殺されたミシマの娘「門倉夕夏」がでんちゃんの役だった。ミシマがした借金を風俗で返す女性という役で、それでいて擦れていない不思議な役だった。最初は健気げ頑張るいい子でありいい子過ぎて現実感がないような印象があった。しかし、借金完済間近で父親がさらに借金を重ね、闇金業者に詰められるところを松田に救われたあと、少し弱音を吐くシーンでの涙をこらえながら気丈にふるまうところで人間味がでたと思う。また松田がミシマの殺害を告白したシーンの慟哭なんかはすごく真に迫っていて迫力があった。

特にキスシーンだとか濡れ場的なことはなかったけど「風俗で働く女性」という役柄はアイドルだったらできなかった役かもしれないし挑戦して成長している姿をみれて良かった。

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番組からの花

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ポスター

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林愛夏が出演する舞台パンピスの森のチラシが入っていた